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講話

入学式式辞

58期新入生の皆さん、先ほど担任の先生から一人一人名前を呼ばれ、君たちはしっかりと返事をして、広島学院のメンバーに仲間入りしました。入学おめでとうございます。君たちは、今日の日を迎えるために一生懸命に努力をしたことと思います。今、その努力が報われた喜びや、これからこの学校でしっかりと勉強をしたい、クラブ活動も張り切ってやりたい、友達とも楽しく過ごしたいといった希望を感じていることでしょう。多少の不安を感じている人も少なくないかもしれません。そういった今の気持ちを6年間忘れないでほしいと思います。と同時に、君たちの努力を支えてくださった家族の方々、小学校や塾の先生方、友達への感謝の気持ちも忘れないで下さい。

 さて、入学許可宣言に先立って、聖書が朗読されました。この聖書の言葉について、少し考えてみましょう。

 朗読されたのは、種を蒔く場面ですが、私たちが想像する蒔き方とは少し違うかもしれません。ここでの種蒔きは、たくさんの種を手に掴んで、それを投げるようにして蒔き、蒔いた後でその土地を耕します。こんな蒔き方ですから、種は色々な場所に落ちます。道端に落ちた種は、土がかぶらなかったので鳥が来て食べました。石だらけの土地に落ちた種は、根があまり伸びなかったのですぐに枯れました。茨の中に落ちた種は、根が張ってある程度育ちましたが、そのうち茨が覆いかぶさってきたために結局枯れてしまいました。そして、良い土地に落ちた種はしっかりと育ち、たくさんの実を結びました。

 これは聖書に書かれている多くの譬え話の一つです。では、この譬え話を通して聖書は私たちに何を教えようとしているのでしょうか。実はこの譬え話の説明も聖書に書かれていて、それによると、ここで蒔かれている種は神様の言葉のことで、蒔かれた土地は私たちの心ということです。このことを、もう少し普段の私たちの生活に結びつけて考えてみましょう。

 私たちに蒔かれている種とは、私たちに大切なことを教えてくれたり、間違ったことをしたときに注意をしてくれたり、くじけそうなときに勇気を与えてくれるような言葉です。言葉と言っても、実際に耳に聞こえる言葉もあれば、心の中に聞こえる言葉もあります。でも、せっかく言葉の種を蒔いてもらっても、全く聞こうとしなかったり、聞いてもすぐに忘れたり、聞いてその言葉を受け入れてもしばらくすると誘惑に負けてその言葉に反することをしてしまうこともあります。そういうときの心を、道端や石だらけの土地、茨の中という言葉で表しています。一方よい土地とは、聞いた言葉を自分の中に受け入れ、自分の成長につなげることができるような心のことです。

 君たちは今まで、多くの人からたくさんの種を蒔いてもらっています。その種が結んだ実の一つとして、広島学院への合格というのもあるのかもしれません。これからもこの学校で、君たちにはたくさんの種が蒔かれます。授業中に学ぶ様々な事柄も、クラブや色々な活動で習う事柄も、怠けたり自分勝手なことをしたりして叱られる事柄も、すべて君たちに蒔かれている種です。家族から、先生から、先輩や友達から、そのほか多くの人から、君たちには絶えずたくさんの種が蒔かれていることにまず気付いてもらいたいと思います。

 そして、この譬え話の中で、もう一つ大切なことがあります。それは、なぜ多くの実を結ぶことがよいのかということです。確かに、種を蒔いたら、たくさんの花が咲き、多くの実ができるといいなと思うでしょうが、でもそれはなぜですか。それは、多くの実を結ぶことで、多くの人を豊かにすることができるからです。しかし多くの実といっても、30倍よりは60倍の方が、60倍よりは100倍の方がより良いとは聖書には書かれていません。人よりたくさんの実を結ぶことが大切なのではなく、自分なりにたくさんの実を結ぶことが大切なのです。

 広島学院では、今も言いましたように、多くの種が蒔かれています。君たちには、自分自身が幸せになるためだけではなく、多くの人が幸せになるために、たくさんの実を結んでもらいたいものです。そのために、いつもよい土地のような心でいることができればいいのですが、人間はみんな弱い面もありますから、道端や石だらけの土地や茨の中のような心の時もあるでしょう。そんなときに、心の畑をどのように耕せばいいのでしょうか。私たちはたくさんの種を蒔くと同時に、どのように心の畑を耕せばよいかを、毎日の学校生活の中で君たち一人一人と一緒に考えたいと思っています。君たちに蒔かれた多くの種がたくさんの実を結ぶのを、私たちは楽しみにしています。

 最後になりましたが、新入生の保護者の皆様、本日はご子息のご入学、おめでとうございます。広島学院は、他者のために、他者とともに生きる人間を育てることを教育目標としています。そのために、生徒一人一人が、持てる能力をより高め、内面の豊かな調和のとれた人格を形成して、将来より人間的な社会の建設に貢献できるための土台を作ってもらいたいと思っています。今新入生にも話しました通り、私たち教職員一同は、生徒にたくさんの種を蒔き、その種がしっかりと育って多くの実を結ぶよう努力をいたします。保護者の皆様におかれましても、どうぞ本校の教育にご理解をいただき、ご協力くださいますようよろしくお願い申し上げます。

 新入生と保護者の皆様の上に、神様の豊かな祝福がありますようにお祈りし、式辞とさせていただきます。