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講話

2016年度 入学式式辞

新入生の皆さん、広島学院中学校入学おめでとうございます。
 君たちは、先ほど担任の先生から一人ひとり名前を呼ばれ、しっかりと返事をして、広島学院のメンバーに仲間入りしました。61期生として今日からこの学校で学ぶことになった君たちを、心から歓迎いたします。
 君たちは、中学受験のために精一杯努力をしてきたことと思います。今、その努力が報われた喜びや、これからこの学校で色々なことを勉強したい、クラブ活動も張り切ってやりたい、友達とも楽しく過ごしたいといった希望を抱いていることでしょう。初めての環境に多少の不安を感じている人もいるかもしれませんが、それでもみんな、広島学院中学校の生徒として一生懸命にやっていこうという気持ちになってくれていると思います。今のその気持ちを、忘れないでもらいたい。と同時に、ご家族や先生方をはじめ、君たちの努力をずっと支えてくださった方々への感謝の気持ちも、忘れないでください。

 さて、入学許可宣言に先立って聖書が朗読されました。イエス・キリストの活動や教えについて書かれた福音書という書物の一節です。この聖書の言葉について、少し考えてみましょう。
 朗読されたのは種を蒔く場面ですが、私たちが想像する蒔き方とは少し違うかもしれません。ここでの種蒔きは、たくさんの種を手に掴んでそれを投げるようにして蒔き、蒔いた後でその土地を耕します。こんな蒔き方ですから、種は色々な場所に落ちます。道端に落ちた種は、その上に土がかぶらなかったので鳥が来て食べました。石だらけの土地に落ちた種は、すぐに芽を出しましたが、根が伸びなかったので枯れました。茨の中に落ちた種は、ある程度育ちましたが、やがて茨が覆いかぶさってきたために、結局実を結ぶことはありませんでした。そして良い土地に落ちた種は、しっかりと育ち、たくさんの実を結びました。
 これは福音書に書かれている多くの譬え話の一つで、ここで蒔かれている種は神様の言葉のこと、
蒔かれた土地は私たちの心のことを言っています。このことをもう少し普段の私たちの生活に結びつけて、考えてみましょう。

 私たちに蒔かれている種とは、私たちにとって大切なことを教えてくれたり、間違ったことをしたときに注意をしてくれたり、くじけそうなときに励ましてくれるような言葉です。言葉と言っても実際に耳に聞こえる言葉もあれば、心の中に聞こえてくる言葉もあります。
 でも、せっかくそういった言葉の種を蒔いてもらっても、全く聞く気がなかったり、聞いてもすぐに忘れたり、しばらくすると誘惑に負けてその言葉に反することをしてしまうことがあります。道端や、石だらけの土地、茨の中とは、そういうときの心のことです。一方良い土地とは、聞いた言葉を受け入れ、自分の成長に繋げていこうとする心のことです。そして、よい土地に蒔かれた種は、間違いなく多くの実を結ぶと聖書は教えています。

 君たちはみんな、この学校の入学試験で充分な成績を修めるだけの優れた学力を持っています。その学力を、これからもさらに伸ばしていかなければなりませんが、広島学院が君たちに望んでいることは、ただ学力を伸ばすことだけではありません。深く考える力や自分の意見を述べる力、人の意見をきちんと聞く力を身に付け、人を思い遣る優しい心、少々のことではくじけない強い心、正しいことを求める広い心を育ててもらいたい。そして、将来どんな大人になって何をしたいのかといった夢や目標を見つけ、それが実現できるように、頭も心も鍛えてもらいたい。そのために、君たちには、授業だけでなくクラブ活動をはじめ毎日の学校生活のあらゆる場面で、たくさんの種が蒔かれています。
 この、毎日たくさんの種が蒔かれているということを、まず知っておいてください。そして、この蒔かれた種が芽生えて大きく育つことを、本気で望んでもらいたい。自分の夢や目標が実現することを、本気で望んでもらいたい。それが、心を良い土地のように保つために最も大切なことです。だけど、良い土地のようにはならないときもあるかもしれません。そんなときにどのようにして心の畑を耕せばいいのか、そのことについても、毎日の学校生活の中で君たちと一緒に考えたいと思っています。
 君たちに蒔かれた種が、君たち自身の幸せのためだけでなく、多くの人の幸せのために、そして特に立場の弱い人のために、いつの日かたくさんの実を結ぶことを、私たちは楽しみにしています。

 最後になりましたが、新入生の保護者の皆様、ご子息のご入学おめでとうございます。
 広島学院は、他者のために他者とともに生きる人間を育てることを、教育目標としています。ご子息にはこれからの6年間、持てる能力をより高めるとともに、豊かな心を育み、調和の取れた人格を形成して、将来それぞれが進む道で立派に生きていくための、人間としての土台を作ってもらいたいと思っています。
 今、新入生にも話しました通り、私たち教職員一同は、たくさんの種を蒔き、その種がしっかりと育って多くの実を結ぶよう努力をして参ります。保護者の皆様におかれましても、どうぞ私どもの教育活動にご理解を賜り、ご協力くださいますようよろしくお願い申し上げます。

 新入生とご家族の皆様の上に神様の豊かな祝福がありますよう祈りつつ、式辞とさせていただきます。