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講話

2019年度 入学式式辞

新入生の皆さん、広島学院中学校入学おめでとう。
 君たちは、先ほど担任の先生から一人ひとり名前を呼ばれ、しっかりと返事をして、広島学院のメンバーに仲間入りしました。64期生として今日からこの学校で学ぶことになった君たちを、私たち教職員と在校生は心から歓迎します。
 君たちは、今日の日を迎えるために精一杯努力をしてきたことと思います。今、その努力が報われた喜びを、感じていることでしょう。新しく始まる中学生としての生活を楽しみにしている人も、たくさんいるでしょう。中には、初めての環境に多少の不安を感じている人もいるかもしれませんが、それでもみんな、今日から広島学院の生徒としてしっかりと勉強をしよう、クラブ活動も張り切ってやろう、友達とも楽しい時間を過ごそうという気持ちになってくれていると思います。そういう今の気持ちを忘れないでください。と同時に、これまでご家族や先生方をはじめ多くの方に支えられてきたということも、忘れないでください。 

 さて、入学許可宣言に先立って聖書が朗読されました。イエス・キリストの活動や教えについて書かれた福音書という書物の一節です。この聖書の言葉を、振り返ってみましょう。
 朗読されたのは種蒔きの場面ですが、私たちが想像する蒔き方とは少し違うかもしれません。ここでの種蒔きは、たくさんの種を手に掴んで、それを投げるようにして蒔き、蒔いた後でその土地を耕します。こんな蒔き方ですから、種は色々な場所に落ちます。道端に落ちた種は、耕しても土がかぶらなかったので、鳥が来て食べました。石だらけの所に落ちた種は、根があまり伸びなかったので、すぐに枯れました。茨の中に落ちた種は、根が張ってある程度育ちましたが、やがて茨が覆いかぶさってきて、結局枯れてしまいました。そして、良い土地に落ちた種はしっかりと育ち、たくさんの実を結びました。
 これは、福音書に書かれている多くの譬え話の一つで、ここで蒔かれた種は神様の言葉のこと、蒔かれた土地は私たちの心のことを言っています。このことを、普段の私たちの生活に結びつけて考えてみましょう。

 私たちの心に蒔かれている種とは、それが芽生えて大きく育てば、自分らしく生き生きと輝いて生きていくことができる、そんな種です。でも、せっかくそのような種を蒔いてもらっても、蒔かれていることに気付かなかったり、気付いても育てようとしなかったり、育てようとしていても、途中で誘惑に負けて育てることをやめてしまったりすることがあります。そういうときの心を、道端や石だらけの所、茨の中という言葉で表しています。
 一方良い土地とは、立派な人間になろうという志を持って、蒔かれた種を最後までしっかりと育てる心のことです。

 君たちは今まで、多くの人からたくさんの種を蒔いてもらっています。その種が結んだ実の一つが、広島学院への入学と言えるかもしれません。これからも、この学校での授業やクラブ活動、学校行事、その他色々な活動の中で、毎日たくさんの種が蒔かれます。
 学校は学びの場ですが、君たちに学んでもらいたいのは、ただ単にテストで良い点を取るための知識や技術だけではありません。人を思い遣る優しい心や、少々のことではくじけない強い心、真実を正しく見る広い心を養い、物事を深く考える力、自分の意見を述べる力、人の意見をきちんと聞く力を育て、自分の判断で積極的に行動する姿勢や、他の人と協力して問題を解決する態度を身に付けること、学校は、こういったことを学ぶ場です。そのために、生徒一人一人に、毎日たくさんの種が蒔かれています。

 君たちには、この蒔かれた種を大きく育てようという意欲を持ってもらいたい。別の言い方をすると、色々なことに積極的に挑戦しながら、自分の夢や目標を探し、それを実現させることを、本気で望んでもらいたい。それが、心を良い土地のように保つために最も大切なことです。
 ただ、人間は誰でも弱い面もありますから、道端や石だらけ、茨の中のような心のときもきっとあります。そんなときに、心の畑をどのように耕せばいいのでしょうか。私たちは、たくさんの種を蒔くと同時に、どのように心の畑を耕せばよいかを、毎日の学校生活の中で君たち一人一人と一緒に考えたいと思っています。
 君たちが、蒔かれた種をしっかりと育て、いつかたくさんの実を結んで、自分自身が幸せになるためだけでなく、多くの人が幸せになるために、生き生きと輝いて活躍してくれることを、私たちは楽しみにしています。

 最後になりましたが、新入生の保護者の皆様、ご子息のご入学おめでとうございます。
 広島学院は”men for others, with others” 「他者のために他者とともに生きる人間」の育成を教育目標としています。ご子息にはこれからの6年間、持てる能力をより一層高めるとともに、豊かな心を育み、調和の取れた人格を形成して、将来、それぞれが進む道で立派に生きていくための人間としての土台を作ってもらいたいと思っています。
 今、新入生にも話しました通り、私たち教職員一同は、生徒にたくさんの種を蒔き、その種がしっかりと育ち、多くの実を結ぶよう努力をいたします。保護者の皆様におかれましても、どうぞ私どもの教育にご理解を賜り、ご協力くださいますようよろしくお願い申し上げます。

 新入生と保護者の皆様の上に神様の豊かな祝福がありますよう祈りつつ、式辞とさせていただきます。