コンテンツにスキップ

講話

5月18日 朝礼

おはようございます。
 9時になったので全校朝礼を始めます。今日も校長室から話をします。

 広島県では、先日緊急事態宣言が解除され、自粛や規制が緩和されつつあります。公立の学校は、今日から自主登校が始まってます。本校では、このまま5月いっぱいオンラインでの学習を続けながら、来週、各学年に登校日を設け、できれば6月1日から、学校での授業を再開したいと考えています。
 元々の予定では今日から中間試験でしたが、6月1日に学校が再開されたとしても、1学期の中間試験はできません。3学期の学年末試験に続いて今回の中間試験もなくなり、その点については喜んでいる生徒も多いかもしれません。しかし、いつまでもそういうわけにはいきません。今のところ7月末まで授業をし、7月31日から8月4日に期末試験を予定しています。その通りにできるよう、6月の初めには授業が再開されることを願うばかりです。

 さて、今朝はゴールデンウイーク中に私が見たテレビ番組についての話をします。NHKの「緊急対談、パンデミックが変える世界」という番組です。見た人もいると思います。世界有数の知性を持つとされる3人が、それぞれ、新型コロナウイルスによるパンデミックをテーマにしたインタビューに答えたものを収録した番組です。これからのグローバルな世界における政治や経済のあり方についての話が多く出てきて、どのインタビューも興味深く聞きましたが、中でもフランスの経済学者であり思想家であるジャック・アタリ氏の話が印象的でした。
 アタリ氏は、ネットで調べると、長い間フランスの政権の中枢で重要な役割を担った人で、政治や経済、文化に対して大きな影響力を持ち、欧州を代表する知性とかヨーロッパ最高の知の巨人などと言われています。そのアタリ氏のインタビューに出てきた2つのキーワードを、紹介したいと思います。

 1つは「利他主義」。利己主義の「己」を、他者の「他」に替えた言葉です。パンデミックが起こり、世界中で差別や分断が以前より目立ってくる危険性が高い中で、それに対してアタリ氏が主張しているのが、利他主義の重要性です。日本語に訳されたアタリ氏の言葉をそのまま伝えると、「深刻な危機に直面した今こそ『他者のために生きる』という人間の本質に立ち返らなければならない。協力は競争よりも価値があり、人類は1つであることを理解すべきだ。利他主義という理想への転換こそが、人類のサバイバルの鍵である」と言っています。
 利他主義というのは、別に他者のために全てを犠牲にするというようなことではありません。他の人の感染を防ぐことが自分の感染を防ぐことに繋がるように、他者のため、また次世代のために行動することが、結果的には自分自身を守ることにも繋がるということです。お互い様ということでしょう。そのような「他者のために生きる」というのが人間の本質だと、アタリ氏は言っています。本当にその通りだと思います。

 もう1つの言葉は「ポジティブ」。アタリ氏自身、何事もポジティブに考えることを大切にしているそうですが、ポジティブと楽観主義とは違うということを、はっきりと言っています。例えば、観客として試合を見ながら「自分のチームが勝ちそうだ」と考えるのは楽観主義。自らが試合に参加し「うまくプレイできればこの試合に勝てるぞ」と考えるのがポジティブだそうです。
 困難にあるときに、そのうち何とかなるだろうという気持ちでただ傍観しているだけでは、なかなか乗りきることはできない。ポジティブな気持ちで自ら立ち向かっていけば、その困難を乗り超えることに繋がる。これもその通りだと思います。

 この「利他主義で、ポジティブに」というのは、実際に政治や経済を動かしている人に向けられている言葉ですが、一方で、身近な小さいことでも構わない、それが世界を変えることに繋がっていることを意識できればいいとも、アタリ氏は言っています。私たちにも大いに関わりのある言葉だということです。
 
 今、色々なことに自粛や制限が求められている状況で、なかなか自分の思うようにはならず、そのために人の心が荒み、攻撃的になるということがあるかもしれません。だからでしょうか、差別や偏見、分断や奪い合いなど、利己主義に支配された寂しい話を耳にすることが多くあります。だけど、もちろんそうであってはいけない。私たちは、身近なちょっとしたことに対してでも、利他主義とポジティブを意識して行動できたら、明るい光が見えてくると考えるべきです。そして、そのように行動している人は、実は、私たちの周りにたくさんいます。

 そんなことも考えながら、またこの1週間を、それぞれにいい1週間にしていきましょう。
 今朝の話は以上です。この後は、今日の課題に取り組んでください。