コンテンツにスキップ

講話

12月7日 朝礼

 おはようございます。
 昨日の未明、「はやぶさ2」のカプセルが無事に地球に帰還したという、久しぶりに明るいニュースがありました。中3以上の生徒は覚えていると思いますが、2年前に、JAXAの研究員でこのロジェクトの技術的取りまとめ役をしておられる本校34期卒業の佐伯尚孝さんに、講演をしていただきました。佐伯さんは、小惑星のサンプル採取のための衝突装置(インパクター)の開発責任者でもありました。
 講演会当時は、探査機が小惑星「リュウグウ」の上空に到着する2カ月ほど前で、本格的な探査はまだこれからという時だったので、佐伯さんご自身も、プロジェクトの行方に気をもみながらお話をされたと思います。もし失敗したら謝罪会見に出なければならないと仰っていましたが、ここまでその必要は全くなく順調に進んできて、何よりです。回収されたカプセルの中がどうなっているのかはまだ分かりませんが、大きな研究成果へと結びつくことを期待したいと思います。
 一方、探査機「はやぶさ2」の方は、イオンエンジンの燃料がまだ半分ほど残っていて、これから次の小惑星の探査に向かうとのことです。太陽の周りを11周ほどして、約11年後の到着を目指すその小惑星は、直径が30m程度だそうです。この前庭のバスケットコート1面の縦の長さが24mぐらいなので、どれくらいの大きさか想像がつくでしょう。11年という時間の長さと目標とする小惑星の小ささに、驚きます。このミッションは、地球の歴史の解明だけでなく、地球に衝突する小天体をいち早く発見して被害を回避するための研究にも繋がるのだそうです。こちらも期待したいと思います。
 と同時に、その頃、日本や世界はどうなっているのだろうかということも気になります。10年前と今の違いよりも、今と10年後の違いの方がずっと大きいのだろうと思います。

 さて話は変わって、12月も1週間がたちました。正面玄関の奥には、クリスマスの馬小屋が飾られています。もちろんロサド先生が作られた馬小屋です。カトリック教会では、クリスマスの4つ前の日曜日からクリスマスの前日までの期間を、待降節(アドベント)といい、今年は昨日のその前の日曜日から待降節に入っています。救い主であるイエス・キリストの誕生を待つ期間ということですが、待つと言ってもただ時間が過ぎていくのに任せて待つというのではありません。相応しい心でその日を迎えることができるよう、しっかりと準備をしながら、その時を楽しみに待つということです。

 同じように「しっかりと準備をして、心穏やかに待つ」ということで、みんなもよく知っている故事成語に「人事を尽くして、天命を待つ」という言葉があります。「人間としてできる限りのことをして、その上は天命に任せて心を労しない」と広辞苑にあります。天命とは、天が与えた運命とか使命。「できる限りのことをしたら、後は天の意思に任せて心穏やかに待つ」ということです。900年ほど前の中国の儒学者の言葉だそうですが、聖書の教えにも通じるものがあるように、私は思います。
 「はやぶさ2」プロジェクトの研究者たちは、何年も長い時間をかけ、私たちの想像をはるかに超えるような綿密な準備を地道に重ね、まさに人事を尽くして天命を待っておられたと思います。私たちも、本当に人事を尽くしたと言えるほどの準備ができれば、その結果にそれなりの意味を見出し、それを受け入れて前向きな気持ちで次に進むことができるのでしょうが、実際には、私もそうだけど、なかなかそうはいかない。人事を尽くすのが難しい。
 「人事」という言葉を調べると「人間の力でできる事柄」とあります。できる事柄は当然人によって違うし、自分の中でもその時々の体や心の調子で違ってきます。そしてできることには限りがあります。ときには「人事」のハードルを下げた方がいいときもあるでしょう。「できる限り」のことをするのです。そういった点は充分に認めた上で、私たちは色々な場面でもっと「人事を尽くす」すなわち、今の自分のできる限りのことをしようと努力をしないといけない。できている人もいるでしょうが、できていない、或いはやろうとしていない人が多いのではないか。自分なりにそれができれば、結果の見え方は違ってくるだろうし、次へ進む意気込みも変わってくると思います。
 もうすぐ試験です。何とかそれぞれに人事を尽くしてもらいたいと思います。