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講話

1学期終業式

今日で1学期が終わり、夏休みになりますが、私は、ずっと教員という仕事をやっているので、子どもの頃から50年近く、毎年夏休みを経験しています。今でも、夏休みが始まるというと、何となくうきうきした気分になるし、夏休みも終わりに近づくと、暗い気持ちになります。それは、夏休には、いつもはあまりできないことが、色々とできるからだと思います。宿題やクラブ活動があるといっても、普段よりは自由に使える時間がたくさんあります。高3はこの時間を使って、何をどれだけ勉強しようかというようなことを考えているでしょう。高1で、フィリピン研修や東北のボランティア、東京研修に参加する生徒は、実りある大きな経験ができると期待をしていると思います。クラブの合宿や遠征、家族旅行を楽しみにしている生徒もいるでしょう。まだ、特別な計画がない人は、何をするか考えてください。旅行でもいいし、本を読むとか、何か問題集を1冊仕上げるとか、芸術やスポーツを楽しむとか、とにかく、夏休みが終わったときに、こんなことをやったと言えるような夏休みにしてください。

 さて、1学期を振り返ってみると、君たちには、それぞれに色々なことがあったかと思いますが、学校としては、おおむね順調に毎日を過ごすことができました。でも、日本全体に目を向けると、痛ましいことや気になることがたくさん起こっています。その中で、特に私が心の痛む思いをしていることの1つに、中高生の自殺の問題があります。楽しい夏休みを前にこういう話はあまり聞きたくないと思うかもしれませんが、つい最近も名古屋で痛ましいことがありましたので、一言だけ話しておきます。
 
 先週名古屋の中2の男子生徒が亡くなったことに関して、その生徒のノートに書かれていた内容が新聞に載っていました。それによると、自殺しようと思った理由は、1つは自分自身に嫌気がしたこと、もう1つは色んな人から死ねといわれたこと。死ねと言われても、ずっと大丈夫なように振舞っていたとも書かれていました。

 私は新聞に書かれていることしか知りませんので、誰が悪いとか誰に責任があるとかいうことについて、ここで考えたいとは思っていません。今、どうしてもみんなに言っておかなければならないと思っていることは、極めて当たり前のことですが、命は掛替えのないもので、最も大切なものだということです。まず、自分の命を大切にしなければなりません。そして、自分の命といってもそれは自分だけのものではありません。だから、自分の命を自分自身で絶つようなことをしてはいけません。もし、周囲の言葉や行いが、そうせざるを得ないような心境にその人を追い込んだとしたら、それは本当に取り返しのつかないことで、悔やんでも悔やみきれないことです。もちろん、自分の命と同じように人の命も大切にしなければなりません。それに反するような言葉や行いは、決してあってはいけません。そのことも含めて、命の重さ、命の尊さを、君たちには、事あるごとにしっかりと考えてもらいたいと思っています。

 話は変わりますが、今度の日曜日は参議院議員選挙があります。世論調査などである程度結果は分かっているみたいだし、みんなには選挙権もないので、あまり関心がないかもしれません。ですが、今回争点になっている問題は、経済の問題、憲法改正の問題、原発再稼働の問題、TPP、社会保障、教育の問題など、これからの日本に大きな影響のある問題ばかりです。こういった問題について、みんなも自分なりに考えてみるべきだと私は思います。下級生の中にはそんなことは全く興味がないという生徒も多いかもしれませんが、家に帰って、家族と憲法の問題や原発の問題について話してみるといいと思います。これらの問題をどうしていくかということは、5年先、10年先、あるいはもっと先の、みんなが社会に出た後の日本の有りように深くかかわってきます。だから、これらの問題が今後どのよう動いていくのか、何かが変わっていくのか変わらないのか、良い方向に向かうのか悪い方向に向かうのか、自分の目でしっかりと見ておく必要があります。

 そして、あるべき姿の社会、それは先ほども言いました一人一人の命を何よりも大切にする社会だと私は思いますが、君たちは、将来そういう社会の建設に貢献するという大きな目標も持って、頭も心も体も鍛えてほしいと思います。

 では、9月2日の始業式に、全員が元気に顔を合わせることができるように、事故のないよう健康に気をつけて、いい夏休みを過ごしてください。