コンテンツにスキップ

講話

12月1日 朝礼

おはようございます。
 明後日は、本校の創立記念日です。この12月3日はフランシスコ・ザビエルが中国の上川島で亡くなった日で、カトリック教会では、この日をフランシスコ・ザビエルの記念日に定めています。そして、広島学院では、1973年からこの日を創立記念日として祝っています。
 今日は、創立記念にあたり、本校の建学の精神について話をします。

 広島学院は1956年に創立されましたが、その前の年に、学校設置の認可を受けるために「設立趣意書」というものが作られました。この学校の設立の目的や大切にしたい思い、建学の精神が書かれたものです。その冒頭部分を、もともとは難しい日本語で書かれていますが、わかりやすい言葉に変えて紹介します。

 広島学院は、個人の人格を尊重し、カトリックの世界観や価値観に基づき、優れた人格の形成と学力
 の向上を調和させる教養を与え、すべての学校生活を通して、真理と正義と平和を強く願い求める円
 満な人間を育てることを、使命とする。

 前回の朝礼で教養について話しましが、同じようなことがここにも出てきます。学力の向上と優れた人格の形成を調和させる、教養とはそういうものですが、教養を身につけ、真理と正義と平和を強く願い求める円満な人間を育てる、これが本校の建学の精神です。

 そして、この建学の精神には、広島学院の設立に関わられた方のどんな思いが込められているのかということについても、みんなは学院生としてよく知っておかなければなりません。実際に色々な機会に聞いているとは思いますが、あたためて話しておきます。

 創立にまつわる話は、1945年8月6日の原爆投下直後から始まります。当時、長束の修道院に住んでおられたイエズス会の司祭や修道士の方々は、原爆投下直後から負傷者を修道院に収容し、献身的に治療や看護をして多くの命を救いました。リヤカーを引いて広島の町を奔走し、負傷者を運んだり薬や食物を集めたりしました。また、瓦礫を片づけ、そのままになっていた遺体を丁寧に埋葬するなど、広島の復興のために懸命に働かれました。そんなイエズス会士の中に、初代校長になるシュワイツェル神父もいました。

 それから数年たち、ある程度復興が進むと、新しい町や新しい国の建設のために働く若者を育てることで広島の町を励ましたいという思いで、広島学院の創立準備を始めることにしました。イエズス会のローマの本部は、この創立準備をアメリカのカリフォルニアのイエズス会に依頼しました。そして、創立のために、カリフォルニアの教会の人々を中心にして世界中から多くの資金援助がありました。この資金援助は10年間にも及び、そのお陰で校舎や今の講堂なども建てることができたそうです。
 特に、事務室の窓口の横にある大理石の板に刻まれているように、フェラン・サリバン両家から、多額の寄付を頂きました。今の価値に直すと、数億円とも聞いたことがあります。また、職員室の前の中央階段の壁に掛けてある木の板に記されているように、カリフォルニアのサンノゼ市にある姉妹校のベラミン学院の生徒たちが、みんなでお小遣いを出し合って、理科設備のためにたくさんの寄付を送ってくれました。
 このように、世界中の多くの人の資金援助もあって、今の広島学院があります。その恩返しという意味でも、今度は私たちが、経済的に貧しい国に建てられるイエズス会の学校に少しでも援助ができればと思う。その一つが、東ティモールの聖イグナチオ学院との関わりです。

 話は戻りますが、このように、原爆投下直後から命がけで「他者のために他者とともに」を実践したイエズス会の方々の、その「他者のために他者とともに」の志を受け継ぐ若者が育ってほしいという思い、そしてカリフォルニアを中心とした世界中の善意の人々の「新しい時代を作るために積極的に働く若者が育ってほしい」という思いが、広島学院の建学の精神に込められています。

 建学の精神は決して飾り物ではありません。ずっとこの学校の中に生きています。創立記念に当たり、あらためてみんなにも、この学校の建学の精神を心に留めてもらいたいと思います。