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講話

3学期始業式

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 本校の正月のHPにもありましたが、今年の干支は丙申です。干支とは、十干と十二支の組み合わせで、十二支の方はよく知られているように、今年は申年です。十干というのは、甲乙丙から始まる10個の並びで、今年は3番目の丙の年です。これを「ひのえ」と読み、合わせて、今年は「丙申」の年ということになります。
 そして12と10なので干支は60年で一回りする、だから60年前の丙申の年に創立した広島学院にとっては、今年は生まれの干支に戻る年に当たります。人間ではこの年を還暦といって、そろそろ隠居が近いということかもしれませんが、本校では、次の60年に向けた新たな出発の年ということになります。ちょうど先学期にはこのアルペ講堂やフランシスコ聖堂が完成し、また今年の4月には法人が合併されることになっており、確かに新たな時代の訪れを感じる、この学校にとってはそんな今年の正月だったと思います。

 さて年末に読んだある記事によると、昨年2015年は「人工知能元年」と言われているそうです。各国の企業がこの分野に本格的に参入し始めたからだそうです。人工知能とは、学習・推論・判断といった知的行動を、人間に代わってコンピューターに行わせる技術のことです。
 今急速に進歩しているのは、特定の目的のための人工知能、例えば、音声認識、顔認識、車の自動運転といったものが、最近ではよく話題になっています。パートナーを見つけたいと希望する男女に対して、人工知能を使って理想の相手を選び出すサービスも実際に始まっていると、正月の新聞にありました。いずれにしても、その特定の能力においては、人工知能は人間の能力をはるかに超えています。一方で、何でも一応はこなせる知的能力を持ち、広く色々な方面に用いるための人工知能の完成を目指している研究者もたくさんいて、あと十数年以内には、一人の人間と同等の知的能力を持つ人工知能が完成すると言われています。
 そのような人工知能は、我々の生活を色々な面で変えるでしょうが、特に、人間の仕事の質を変え、新たな仕事を創り出すことになると、記事にはありました。2011年にアメリカの学者は、「今年アメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、彼らが大学を卒業するときに、今は存在していない職業に就くだろう」と予測しています。これも十数年後のことです。

 こういう未来に向けて、これからの若者はどんなことを学んでいかなければならないか、その記事には色々なことが書いてありましたが、中でも、生涯にわたって自ら学ぶことができるための基礎を若いうちに身に付けなければならないということが、強調されていました。
 パソコンを開けるとしょっちゅうアップデートされるように、これからの社会では、自分の持っている専門の技術や知識を自分の力でスピーディーにアップデートしていかなければならない、そのために、どんな分野に進んだとしても生涯にわたって自分で学び続ける必要がある、その基礎を若いうちに身に付けることが大切であるということでした。

 この自ら学ぶための基礎を身に付けるためには、やはりまずは学校の勉強にしっかりと取り組み、与えられた課題を誠実に果たしていくしかないと、私は思います。我々教員の立場からすれば、生徒が勉強をする気になるように、あれこれ工夫をしたり叱咤激励をしたりします。だけど生徒の立場からすると、勉強はやる気があるときだけすればいいというようなものではない。やる気がなければやらなくてもいいのは遊びであって、仕事や勉強はそういうわけにはいきません。しかも、すぐに目に見える結果を求めてもそれは難しい。なかなか結果が出なくても、やり続けなければならない。要するに、勉強を生活の中に習慣付ける必要があります。今の時代、勉強の習慣付けの妨げになるものが身の回りに溢れていますが、それでもこの習慣付けは、これからの中高生にますます求められるものだと思います。

 年末に読んだ記事の話に戻すと、今まで人間がやってきた様々な作業や判断を人工知能に任せる時代になると、人間は難しいことを学ぶ必要がもうなくなるのかというと、そうではなく、逆に学ぶべきことが増えるということでした。
 確かにその通りだと思いますが、でも最も大切なことは、「人間は何のために生きているのか」「人間の尊厳とは何か」といった哲学的、宗教的なことについて、しっかりと考え感じる力を養うことだと私は思います。この学校でも、今までそういったことを大切にしてきたし、これからも大切にしていかなければなりません。

 新しい年を迎え、みんなには、中学生・高校生として今やるべきことをあらためてよく意識し、それに励んでいく決意を新たにしてもらいたいと思います。