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講話

2月7日 朝礼

 おはようございます。今朝はまず、奉仕委員長から話があります。
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 さて、2日前の2月5日は、ペドロ・アルペ神父がローマで亡くなって31年目に当たる命日でした。アルペ神父は本校の設立とも深く関わりのあった方でしたが、そのことは置いておいて、1973年にイエズス会の総長として「私たちの何よりも大切な教育目標は、他者のために生きる人の育成でなければならない」と発信しました。それ以来、世界中のイエズス会学校は “Be men for others, with others.” を目標にしているということは、みんなもよく知っているでしょう。
 アルペ神父の次の総長であるコルベンバッハ神父は、アルペ神父のこの思いを受け継ぎ、アルペ神父の求めた「他者のために生きる」ということを正しく実践するためにはどのような人間でなければならないのかを、Cから始まる4つの単語で示しました。competence, conscience, compassion, commitment の4つです。3年前にこの4つの単語を廊下に掲示し、全校生に話をしたことがあるので、高校生は覚えているでしょう。どのような人のことを示しているかというと、
  competenceは「有能な人」。幅広い教養や技能を持ち、物事を深く正しく理解する人。
  conscienceは「良心的な人」。良心の声に耳を傾けて従う人。
  compassionは「共感的な人」。特に弱い立場の人の思いに共感する慈しみ深い人。
  commitmentは「関わる人」。実際に行動して関わる人。

 ところで、みんなもテレビや新聞を見て知っていると思いますが、10日前に埼玉県で、医師の鈴木純一さんが散弾銃で撃たれて亡くなるという大変痛ましい事件がありました。報道によると、鈴木医師は、10年ほど前から高齢者を中心に訪問診療を行っており、地域の在宅医療を担う中心的な存在として、患者やその家族からの信頼が極めて厚いお医者さんでした。特にデルタ株の感染拡大後は、連日深夜まで、自宅で療養している感染者を訪ねて診療に当たっておられました。「何よりも患者のことを第一に考え、患者のために自分の時間を犠牲にして熱心に取り組む責任感のある優しい先生だった」との同僚の声もありました。
 鈴木医師は、まさに4つのCの卓越した方だったのだろうと、私は思います。competence、医師として確かな知識と技術を持つ有能な人。conscience、今、優先的に行わなければならないことについて、良心の声に従う人。compassion、患者の苦しみや痛み、恐怖に共感する人。commitment、患者と実際に関りを持つ人。
 この4つのCがあって本当の “Be men for others, with others.” は実践できるということを、あらためて教えられたように思います。

 このように患者さんのために献身的に働いておられるお医者さんは、実際にたくさんいらっしゃるでしょう。そのお一人で、本校を卒業されたあるお医者さんへの感謝の電話が、先日学校に掛かってきました。鈴木医師の死亡が報道された日だったと思います。事務室の先生が電話に対応されましたが、大阪に住んでいる女性の患者さんからで、長く病気で苦しんでいたけど、この本校卒業のお医者さんがずっと一生懸命に診てくださったお陰で、少しずつ社会復帰ができるようになり、本当に喜んでいますと涙ながらに感謝を述べられたそうです。このお医者さんのように、社会の色々な場で、それぞれの立場で ”Be men for others, with others.” を実践している卒業生の姿は、私たちにとって励みになります。
 と同時に、わざわざ学校に電話を掛けてこられたこの女性の気持ちも大切にしたい。この方は、立派な医師が卒業生の中にいることを知ってもらい、心からの喜びと感謝を学校にも伝えたいという純粋な気持ちで、電話を掛けてこられたと思います。私たちは、この女性の喜びと感謝の気持ちから、自分達への期待を感じ取らないといけない。この期待は、アルペ神父の私たちへの期待と同じものだと思います。
 この期待に応えることができるよう、たくさんのことを積極的に学び、有能で、良心的で、共感的で、実際に関わる人間へと成長することを目指していきたいと思います。