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講話

2月14日 朝礼

 おはようございます。
 今日、2月14日はバレンタインデーです。男子校にはあまり縁のない日かもしれませんが、その由来を少し話しておくと、2月14日はもともとカトリック教会では聖バレンタインという聖人の祝日でした。聖バレンタインは、3世紀にローマで殉教したという記録がありますが、その生涯について詳しいことはよく分かっていません。ローマ皇帝の命に背いて、命懸けで若いカップルが結婚できるように尽くしたということで、恋人たちの守護聖人として崇められ、14世紀にはヨーロッパでバレンタインデーが祝われるようになったようです。ただ、カトリック教会は50年ほど前に、聖バレンタインの祝日を暦から外しました。歴史的な事実があまりよく分からないからだそうです。ということで、今ではキリスト教とは関係なく、バレンタインデーの習慣だけが残っています。

 バレンタインデーについてはこれぐらいにして、始業式でも話したけど、この2年、コロナ感染拡大の影響もあって、多くの学校で生徒1人1台のタブレットやパソコンの導入が進みました。「GIGAスクール構想」という文部科学省の取り組みよるものですが、文科省のHPに掲載されている公式プロモーション動画にこんな場面がありました。小学校の授業で、タブレットを使っている児童が手元のタブレットを見ながら笑顔で「タブレットがないと全部自分の頭で考えないといけない。でもこれがあれば間違えたとき説明があるので、勉強を進めることができる」というようなことを喋るのです。こんな動画が掲載されているとある本にあったので、実際に私も見て確かめました。
 タブレットで出された問題を解き、間違えたらすぐにそれを正してくれて、自分のレベルに合わせた次のステップに誘導してくれる学習アプリがあります。この動画に映された教室では、おそらくそんなアプリを使いながら、子どもたちが自分で学習を進めているのでしょう。私はそのようなアプリを使ったことがないので、それについてあれこれ言うことはできませんが、小学生が自分たちで楽しく勉強ができているようで、いいなと思いました。

 ただ「タブレットがないと全部自分の頭で考えないといけない。でもこれがあれば間違えたとき説明があるので、勉強を進めることができる」という言葉は、タブレットを導入するプロモーションのセリフとしては、少し心配な点があります。タブレットを使うことで、間違いから学ぶことや自分の頭で考えることが疎かになるとすれば、それは困ります。

 一生懸命に考えて出した答えが間違っていたときに、どこが違うか、なぜ間違ったかを、自分で探す作業は重要です。それをせずに、ただ与えられた正解をよく理解したつもりになっても、時間が経てばまた分からなくなるものです。確かな力を付けるには、そうやって手間暇をかけながら間違いから学ぶということを大切にしなければなりません。
 それと、小学生はともかく中高生のみんなは、「全部自分の頭で考えないといけない」と嘆いて、考える作業の効率化をあまり求めてはいけない。じっくりと時間をかけて考えることに耐えられるようになってもらいたい。「AIが飛躍的に進歩するこれからの時代は、何よりも自分の頭で考える力が必要とされる」などとよく言われますが、本当に「考える」作業が必要なのは、正解が1つには定まらない問題や、正解の無い問題の答えを自分の頭で探す場面です。そういう意味では、正解が1つある問題を解くのは「考える練習」と言えるかもしれません。もちろんそういう練習は必要です。しっかりと練習をして、すぐに答えが出なくても諦めない「体力」を身につけておかなければならない。それが、簡単には答えが出せない問題にも立ち向かっていく力になります。

 とにかく、タブレットを学習を助ける道具として上手に使ってもらいたいと思います。